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足元から見続けてきた銀座

足元から見続けてきた銀座

月光荘サロン・月のはなれカウンター下に設置されている、年季の入った足置き。そこには70年を超えるストーリーがあります。

古き良き銀座を代表するバーの一つだった「銀座クール」。1948年、オーナーバーテンダー古川緑郎氏がオープンし、当時、銀座三大バーの一つに数えられていた名店です。古川氏は昭和初期、13歳で修行を始められ、銀座のバーでのキャリアを積まれた、日本を代表する伝説の名バーテンダーです。

1971年、銀座クールはコリドー街銀座7丁目に移り、21世紀に入るまで長く営業を続けてきましたが、2003年11月19日、古川氏の88回目の誕生日に惜しまれながら閉店となりました。まだ元気なうちに引退するというのが、古川氏の引き際の美学であったようです。

その後、このお店をラーメン屋にするという話が持ち上がります。しかし、自分たちの親の代から通った名店が変わりゆくのをただ黙って見ているのも忍びないと、株式会社スマイルズ代表の遠山正道さんをはじめとする新オーナーたちが集まり、銀座ストックという素敵なワインバーに生まれ変わります。

銀座ストックではカウンターをはじめとして、KOOL時代の数々の調度品を引き継いでいました。そんな老舗バーの思い出が詰まった銀座ストックも、13年5ヶ月の営業を経て、2019年10月8日に閉店。

そのクロージングパーティで、遠山正道さんと月光荘主人が同席した際、「沢山の方々の想いが染み込んだアイテムを、月光荘で少しでも引き継いでもらえたら」という話が持ち上がります。

そこで、星の数ほどの紳士淑女のフットプリントが付いたカウンター下の足置きを、月光荘サロン・月のはなれのカウンター下に移設することになりました。輝かしい歴史の一端を引き継がせていただく重みを、スタッフ一同ひしひしと感じています。

間接的にご縁をいただいた銀座クール・古川緑郎さんの言葉がとても胸に響くので、皆さまとシェア。

「店内では、客も主人も従業員も、行儀、作法、道徳を守らねばならない。店の造作がいいからとか、調度品、高級品が並べられているから良い店ではない。主人と従業員が一丸となって、店のため、ひとつの目的のために務めなければ良い店にはならない。そして、客の協力も必須。客が良い店を作るのだ。

客がその店の営業目的を知って、エチケット、マナー、モラルを守ってくれれば、店内は良い雰囲気につつまれて楽しい店となり、飲む物も自然とおいしくなる。そうなれば客が口から口へと伝えてくれて、あの店は良い店だから行ってみなさいとなる。良い客がつけば店にも風格がつき、世間にも宣伝されて、客が集って来る。

客は一軒の店だけではなく他の店にも行って、いろいろと比較をする。良い店には必ず共通した何かがあるものだ。」